開業医を目指しているドクターのみなさんは、生まれ育った街にかかりつけのクリニックがあることが当然として育ったことでしょう。
しかし、わが国の街にクリニックや病院があるのが当然になったのはほんの100年少々前の話なのです。
「病院の歴史」を紐解けば、これから開業をしたいと考えているドクターの参考にもなるでしょう。
※諸説ございます。
国内最初の病院は大分県のアルメイダ病院
世界各国、特に文明の中心地となったヨーロッパでは、病院は街の中心的な役割を担う場所でした。
ところが、日本は神仏の怒りや呪詛などによって病気が発生するものという発想が根強くあり、医学的には過疎地としての歴史が長い国だったといえます。
日本で最初の病院は、1557年にポルトガル人の宣教師が現在の大分県に建てた病院で、現在でも宣教師の名前を取り「アルメイダ病院」として姿を残しています。
この病院の設立によって、わが国に西洋医学が伝わることになりましたが、すぐには受け入れられませんでした。
当時の日本は東洋医学、つまり「漢方」が主流で、西洋医学の考え方はまったく別次元の話だったのです。
明治維新以後の小さな診療所が「病院」になった
時代劇にもしばしば登場することがある小石川養生所をはじめとして、江戸時代にも診療所のような機関は作られましたが、町人に「不調があるので診療所に行く」という風習はありませんでした。
この時代の医療は漢方医が自宅療養している人を訪ねる往診形式が一般的だったので、現在のように入院して継続治療を受けるというケースはまれだったのです。
明治維新の後、西洋医学が開かれたことによって市中に小規模な診療所が作られるようになり、診療所のなかでも経営状況が良かったものが規模を拡大して病院となりました。
医療法第1条の5による定義では、病床数20床以上の医療施設を病院と呼びますが、こういった歴史を振り返ってみるとスタートはみな「市中の診療所」だったことがわかります。
つまり、街のクリニックであっても、地域医療の中核となる大病院であっても、そもそもの形や目的は同じで「市民の不調を解消する場所」だったのです。
これからクリニックの開業を目指しているドクターは、自らが医師の責務をまっとうするための新たなステージに立とうとしていることを自覚しておきたいですね。