年々、赤字の割合が増加している自治体病院。
2016年度には全国428の中で、実に62.8%もの240病院が赤字を計上しています。
この増え続ける自治体病院の赤字経営の背景には、何があるのでしょうか。
500床以上の大規模病院に特に多いと言われる赤字の原因を、詳しく見ていきましょう。
増加する収益を上回る費用
自治体病院の決算の見方でポイントとなるのは、100床当りにおける収支の割合です。
この総収益は前年の15年度と比べ、16年度は1.4%増化しています。
しかし同じく100床当たりの総費用に目を移してみると、16年度は1.9%も増加しているのです。
このため差額の0.5%分が全体として赤字になり、問題視されています。
費用の中でも負担の増加が指摘されているのは、職員の給与費用(前年比3.5%増加)、薬品費用(同2.2%増加)、委託に関する費用(同2.7%増加)の3つです。
これらが自治体病院の財政を圧迫した理由には
・公務員の俸給制度の見直し
・治療における超高額薬剤使用の保険収載
・アウトソーシングの多様化
があります。
しかし自治体病院の存立の目的の一つは社会に必要な質の高い医療を提供することで、地域に貢献していくことでもあります。
全国自治体病院協議会によるとチーム制の医療により質の高さを求めた結果、費用の増加はやむを得ない側面があるとしています。
危惧される地域医療の崩壊
しかし、このまま赤字を垂れ流せば千葉県にある休止した銚子市立総合病院のようなケースが増える可能性も出てきます。
前述の全国自治体病院協議会の邉見会長は地域医療がかつて指摘された崩壊の水準に近付いているとし、強い危惧を抱いています。
先ほど述べた500床以上の大規模病院の経営状態に関してはさらに厳しいものがあり、前年度に比べると13.7%も赤字病院の割合が増加しています。
一方で患者単価と呼ばれる患者1人当たりの1日の診療収入は増加傾向にあり、人口減による収入の減少を単価を上げることで補う傾向があります。
自治体病院の赤字が増加する理由は公的機関として弾力的な経営ができないことや、国の低医療費政策が関連していること、医事会計を外部に委託していることが指摘されています。
近い将来に抜本的な改革を施さない限り、自治体病院の存立はますます厳しい現実に直面していくでしょう。