ある調査によると実際に患者に漢方薬を処方したことがあるドクターは約80%。
最近では原料価格の値上がりなどの問題が浮上してきた漢方薬ですが、導入するべきなのでしょうか?
現代医療における漢方薬の位置づけ
現在、勤務医としての業務にあたっているドクターであれば、患者に漢方薬を処方した経験がある方が大多数でしょう。
日本漢方生薬製剤協会の調査によると、約80%以上のドクターが「実際に患者に漢方薬を処方したことがある・現在も漢方薬を処方している」と回答しています。
漢方薬を処方した理由については、西洋医薬品の使用で効果がなかった症例に漢方薬を処方して効果が認められたためと回答したドクターが約60%。
一般的に患者が持つ「効果が緩やかである」というイメージとは裏腹に、数多くのドクターが「漢方薬には高い治療効果がある」と認めていることになります。
臨床研究が進み、エビデンスがはっきりとしてきた現代では、漢方薬を優先したり、漢方薬と西洋医薬品を併せて処方するドクターも増えています。
そもそも漢方とは大陸から伝来した医学知識を日本独自の風土にあわせて発展した医学。
名前に『漢』と冠されていても日本特有の医学である漢方は、日頃からの腹診・脈診・舌診に代表されるようにドクターの基本的な診察手法の一つとして定着しており、漢方薬も処方せんとして一般化しているのです。
漢方薬の値上がり、導入は適切か?
最近、漢方薬の値上がりが問題になっています。
漢方薬の原料である生薬の多くは中国からの輸入に頼っていますが、世界中で広くサプリメントが服用されるようになったため生薬を買い求める業者が増加し、特に欧米への供給は60〜80%も増加しています。
そのために原料価格が高騰し、漢方薬も値上がりをしているのです。
値上がりの幅は低いものでも2倍、高いものでは5倍程度に上り、将来的に漢方薬が安定して供給できるのかも危ぶまれている状況です。
このような状況は、開業を目指しているドクターに対して「漢方薬を導入、処方することが適切か?」という悩みを提起するでしょう。
開業医の中には、漢方治療法や漢方薬に特化した漢方クリニックも存在していますが、昨今の生薬の値上がりの打撃は相当なものでしょう。
世界的な需要と供給による問題であるため、将来的な予測も不透明であり、漢方薬に特化したクリニックの開業は現段階では避けるほうが賢明かも知れません。
ただし、国産原料を確保する動きも盛んになっており、完全に供給がストップするという事態はないでしょう。
値上がりしているとはいえ、西洋医薬品と比べると安価で身体への負担も軽いため、漢方薬の処方を求める患者もたくさんいます。
現状を考慮しながら、なおかつ患者の希望をできるかぎり叶えるとすれば、これからクリニックを開業するのであれば漢方薬への特化は避けながらも柔軟に導入するのが良いでしょう。