臓器移植は、疾患を抱えている人にとって最後の拠り所です。
日本は以前から臓器移植後進国と呼ばれてきましたが、2010年の臓器移植法の改正によって要件も緩和されてきました。
そんな中、厚生労働省は「小児から提供された腎臓及び肝臓は小児患者に優先的に移植する」という、移植希望者の患者選択基準の改正を行いました。
国内では心臓に次いで2例目、3例目となるのですが、そもそも患者選択基準とは何なのでしょう?
また、改正の理由は何なのでしょうか?
今回は、それらについて見ていくことにしましょう。
1.患者選択基準とは?
患者選択基準、正しくは「臓器移植希望者選択基準」といいますが、これについてまずは説明します。
これは簡単に言うと「臓器移植を待っている患者のうち誰を優先するか」を決めるための基準のことです。
まずは親族を優先、親族がいなければ厚労省が定めた基準に従って移植する患者を決めていく、といった感じです。
これについて以前から多数の問題が挙がっていたため、今回有識者の意見も参考にして改正に至ったとのことです。
2.従来と改正後では何が違う?
これまでは、腎臓については子どもがドナーになった全事例で大人に移植され、肝臓についても一部が大人に移植されてきました。
改正後の新しい基準では、腎臓において20歳未満、肝臓において18歳未満を「子供」と定義し、優先的に子供に移植することとなりました。
今回、子供への移植を優先するに至った背景にはどのような理由があるのでしょうか?
3.改正の背景
理由はいくつかありますが、共通していえるのは「子供に腎臓・肝臓を移植した方が大人に移植するよりもその機能を良好に保てる可能性が高い」ということです。
具体的には、
【腎臓】
・未成年の透析患者は、透析をすることで成長障害に繋がりやすい
・移植6年後の身長の改善は、5 歳以下の患者だと大きな改善が見られた
・18 歳以下の移植腎は長期間にわたり腎臓の機能を良好に保つことができる傾向にある
・16 歳以下のドナーの腎臓は、移植後大きく成長する。これは、成長途中にある小児には小児の腎臓が必要だということを示している可能性がある
・34 歳未満のドナー腎からの移植の成果は良好。10 代、20 代との有意差はなく、その一方で 50 歳以上のドナーからの腎移植後の生着が悪い。
・体格が大きいのに腎臓、が小さい(臓器のサイズのミスマッチ)と移植後生着率が悪くなる。
【肝臓】
・肝移植症例登録報告(2016 年)より、生体肝移植後の成績では、19 歳 以下の患者の生存率が高い。
・ 39 歳以下のドナーの肝臓を移植された患者の生存率は、40 歳以上と比較して高い。
このような医学的知見に基づいての改正となったようです。
これからの未来を担う子供たちが臓器移植をスムーズに受けられるようになるように、今後のさらなる検討を期待しましょう。