「大学病院」と聞くと、設備も整っているし、優秀な医師もたくさんいるので安心して診てもらえる、というイメージを持っていると思います。
しかし、「東大」「京大」「慶応」といった名だたる大病院ですら現在の経営が安定とは言えない状況になっておきており、大学病院の経営難が叫ばれている現状なのです。
さらに、大学病院は医学部生の研修先としても人気でしたが、最近は大学病院よりも市中の病院を研修先として選ぶ学生が多いのだとか。
今、大学病院の現状はどうなっているのでしょうか。
今回は大学病院の凋落についてみていきたいと思います。
①財政赤字が深刻
平成26年における全国の国立大学付属の45病院の決算見込みは、消費税の引き上げによる影響を受けて全体で約83億円の赤字と算出されました。
財政赤字に陥ったことで、医療関係の設備・備品の購入を増税前に比べ約35%も減額せざるをえない状況になりました。
その後平成27年度は若干の改善を見せたものの、未だ多くの大学病院が経営難に苦しんでいる現状が浮かび上がっています。
このままでは、病院の設備も新しくするのが難しくなったり、人件費を抑えなければならず優秀な人材の流出を招いたりして、ますます経営状況は厳しくなっていくことが予想されているのです。
②経営難の原因
ここまで大学病院の経営難が深刻になった直接の原因は前述の通り消費増税です。
病院は医薬品や医療設備などを仕入れる際に消費税を負担しますが、これを患者に請求することはできません。つまり、ここに損が生じてしまいます。
もちろん厚生労働省のほうでもこの問題は重大なものとして認識しており、そして、この損税を補填するために、診療報酬を引き上げたり、紹介状なし初診料や再診料を設けたりと対策を講じています。
しかしそれだけでは十分でなく、赤字の劇的な解決には至っていません。
③経営が順調な民間病院への人材流出
大学病院の多くが赤字になっていますが、他方で民間病院は黒字で安定しているところが多いのです。
大学病院の赤字が深刻化しているので、スタッフの給料が削減されたりしています。
場所によっては民間病院で働いた方がより高い給料をもらえることもあります。
そうなると必然的に、優秀な医者やこれからを担う若い医者は民間病院に行きたがります。
その結果、大学病院には金だけでなく人も足りない、という事態になる可能性があります。
かつての「大学病院で見てもらえれば大丈夫」という通説は通用しなくなってくるかもしれません。
経営難、人材流出という二つの悩みの種を抱えた大学病院はこれからどうなっていくのでしょうか……。