クリニック運営のステップアップにおいて必ず登場するのが『移転』です。
特に最近では「開業時は初期投資を抑えるために最低限の物件・設備で」とコンパクトなクリニック開業をおこなうドクターが多いため、事業が好調になる数年後には早くも好物件への移転を考えることが多い傾向にあります。
ただし、クリニックの移転は他業種の移転と比べるとかなり煩雑です。
ここでは、クリニック移転で失敗しないための大切なポイントを紹介しましょう。
移転先を選定する際のポイント
クリニックの移転において最も重要なのは「これまで通っていた患者が移転先でも通いやすいか?」という点です。
いくら好物件に移転したとしても、交通アクセスが悪い、場所が分かりにくいなどの条件では、これまで通っていた患者の足が遠のいてしまいます。
事業がステップアップするという前提で考えれば、新たな物件は現在よりも広く、アクセスもさらに便利に、という条件がベストなので、慎重に移転先を選定しましょう。
また、移転先が同一エリア内であっても、これまで使用していた電話番号を引き続き使用することができないケースがあります。
これはNTT収容局の区別の問題ですが、目と鼻の先に移転しても同じ電話番号を引き続き使用できないことがあるので注意が必要です。
反対に、別の収容局のエリアに移転しても同じ電話番号が使用できる場合もあるので、事前にNTTに問い合わせをして確認しましょう。
移転後に別の電話番号に変わってしまった場合は、3ヶ月間は無料で新番号を案内してくれるサービスがありますが、3ヶ月以内に患者が電話をかけてくれるとも限らないので「電話番号が変わらない場所」というのは移転先選定のひとつのポイントとなるでしょう。
ただし、ナンバーポータビリティを利用して別の通信会社と契約すれば同じ番号を使用できることもあるので、優先順位としては低めです。
移転は「できるだけ間を空けずスムーズに」
クリニックの移転には大変な労力が伴いますが、本当に苦労するのは実は患者さんかも知れません。
特に、毎週定期的に受診する必要がある患者などは、移転作業が整って新クリニックが開業するまでの間の診療をどうすれば良いのか、その間に病状が悪化してしまった場合に誰に相談すれば良いのかと不安になるでしょう。
クリニックの移転は、できるだけ間を空けずスムーズにおこなうことが重要です。
もし、移転のための休業期間が1ヶ月も2ヶ月もあるようでは、集患計画が功を奏して集まってくれた患者の多くを逃してしまうことになります。
旧クリニックの診療業務をこなしながら、一方では新クリニックの移転に伴う官公庁への届出などの事務手続きや物理的な作業などをこなすことになるので、ドクターの苦労は大変なものになります。
事業のステップアップのためとはいえ、これまでクリニックの存在を支えにしてくれていた患者のことを第一に、スピーディーな移転になるよう、しっかりと計画的に進めていきましょう。