医師のキャリアアップのひとつとして挙げられるのが「海外での開業」です。
医療先進国でクリニックを開業したい、後進国で広く日本の医療を提供したいなど思いや目的はさまざまですが、海外でのクリニック開業には一定の制限があります。
ここでは、日本のドクターが海外でクリニックを開業する場合の注意点について紹介しましょう。
海外で医師免許を取得する必要がある
日本の医師免許はあくまでも日本国の厚生労働省が認めたものであり、海外では資格の効力を発揮しません。
日本で医師免許を取得したドクターが海外でクリニックを開業するには、基本的には海外の医師免許を取得する必要があります。
ただし、国によっては医師免許の取得や開業に対する制限が設けられていることがあります。
たとえば、アメリカでは州によって医師免許の制度が異なっており、基本的にはUSMLEと呼ばれる試験のSTEP3という難易度が高い試験に合格したうえで1~2年の臨床研修を受ける必要があります。
さらに、外国人が医師免許を取得することを制限している州もあるので、場所によっては開業不可となります。
フランスやドイツでは、日本で医師免許を取得したドクターが自国内での医師免許を取得することを原則的に認めていません。
ドクターとして認められても開業できないケースがある
海外の医師免許を取得して医療に従事できる条件が整ったとしても、クリニックの開業が認められないケースがあります。
たとえば、東南アジア諸国では外国人が法人を設立する場合に強い規制が設けられています。
タイで現地法人としてクリニックを開業しようとする場合、51%以上をタイ資本で形成する必要があるため、現地で出資者を募集する必要があります。
出資者の募集が上手くいかないと、医師免許を取得できてもクリニックは開業できないわけです。
一方で、カンボジアでは海外資本の法人設立に対する規制がないだけでなく、外資系法人であれば法人税が9年間も免除されるという優遇制度が設けられています。
海外におけるクリニックの開業については、対象となる国の医師免許制度だけでなく、法人設立の可否や条件などにも目を向ける必要があります。
日ごろの業務で忙しいドクターがこれらの調査をおこなうのは大変なので、海外でのクリニック開業を検討しているドクターは、海外におけるクリニック開業コンサルタントを介して計画することをおすすめします。