獣医師が目指すキャリアパスの到達点といえば、やはり『開業』でしょう。
3世帯に1世帯はペットを飼育している現状では、動物病院・クリニックのニーズは衰えることはありません。
また、人間のように大規模な総合病院が各地に所在しているわけではないので、動物医療の世界は開業医こそが窓口であり最後の砦でもあります。
多くの獣医師が「先々は開業を目指したい」と考えるなかで、大きな悩みとなるのが「独立のタイミング」です。
動物病院を独立・開業するには、どのようなタイミングが適正となるのでしょうか?
十分な経験を積んでからの開業が望ましい
獣医師のニーズが高まると同時に、ペットオーナーの獣医師に対する要望はますます多様化しています。
まず、ひと昔はペットといえば犬・猫が中心でしたが、最近では爬虫類や希少な小動物などが愛玩動物として嗜好されているため、獣医師は幅広くさまざまな動物に対する医療知識と経験を積む必要があります。
動物病院や研究機関などに就職して幅広い動物の臨床経験を積んでおかないと、開業しても限定的な動物しか診療できない、幅の狭い動物病院になってしまうのです。
ただし、あまりにも経験を積むことに固執してしまうのも好ましくありません。
たとえば希少な動物の臨床経験を積むためには、よほど特殊な研究機関などに就職していない限りなかなか機会がないのも現実です。
獣医師としての経験をはかる明確な基準はありませんが、十分な経験は必要でも、慎重すぎると独立のタイミングを逸してしまうため注意が必要です。
資金計画も重要
獣医師が独立を決めるために重要なものさしとなるのが資金です。
病院・クリニックの開業には、あらかじめ資金計画を立てて、自己資金をいくら投じることができるのか、金融機関からどのくらいの融資を受けるのかのバランスを調整することになります。
では、獣医師がどのくらいの自己資金を用意できるのかというと、実は獣医師の勤務医の収入はあまり好待遇ではなく、開業に十分な自己資金を用意するには相当な時間がかかるといわれています。
しかも、診療科目によって特定の機器を揃えるのではなく、動物病院は幅広い治療に対応するために幅広い機器を揃える必要があって、開業資金は高めです。
「十分な資金が貯まってから」と計画していると独立のタイミングを逸してしまうので、十分な融資をしてくれる金融機関に出会えたときこそが独立のベストタイミングとなるでしょう。