税務調査は、先生が確定申告で申告された所得金額が正しく計算されたものであるのかを確認するため、適正公平な申告納税を実現するために行われます。
「普段からきちんとやってるから全然平気だよ」と思っている病院関係者でも、いざ税務調査の時になるとなかなか平常心でいられないものです。
疑わしい部分が多く調査が長引くと、結局漏れがなかったとしてもその労力は多大なものになります。
今回は、病院に税務調査が入った場合に備えて、知っておきたい10の知識をご紹介します。
①心構え
必要は心構えは4つです。
・慌てない(そのために事前準備をきちんと)
・虚偽の申告をしない(調査が長引きます、わからないなら正直に)
・冷静な対応(わざと感情的にさせようとする調査官も)
・誠実な対応(いわずもがな)
真摯に対応すれば、調査は滞りなく終わります。
②備品の保管場所を確認!
経費計上している備品等の資産のある場所について、診療所にある資産は原則として事業用、自宅にある資産は原則として個人用として扱われます。
調査ではゴルフウエア、ゴルフクラブ等の、個人的な所有物が経費に混入されていないか疑われます。
現物確認をした結果、自宅にある場合は否認の対象となり、経費性を主張する場合、納税者が立証責任を負わなければなりません。
事業用として使用している物は診療所に保管し、自宅で仕事をするために購入したパソコンは、保存内容に個人的な内容が残っていないように一度確認しましょう。
③正しい処理だと証明する証拠をまめに保存する
調査に備えて、日ごろからこまめに、領収書に一緒に食事した相手の名前をメモ書きをしたり、証拠の保存を心掛けておくことが非常に重要です。
調査官も証拠を提示されるとどうにもできません。
④そもそも調査は断れる?
税務調査は、表向きは任意です。
しかし実際には、税務署の担当官には「質問検査権」が与えられています。
この質問検査権を拒否した場合、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処されます。
つまり、罰則があるので実質的に調査は断れないのです。
やましいことはなにもないのでどうぞ調査してください、という感じで構えておきましょう。
⑤カルテ開示を求められたら?
税務調査において、調査官から患者さんのカルテを見せてほしいと言われた場合の対応はどうすべきでしょうか?
そうした場合は「カルテは見せられません」ときっぱり断ってください。
医療従業者には、刑法によって守秘義務が定められているため、患者のプライバシーに関わるものを他者に見せることはできません、と言いましょう。
⑥書類を持って帰りたい、と言われたら?
税務調査の際、調査官が時間がないため帳簿書類を税務署に持って帰りたいという場合があります。
このようば場合、帳簿書類の持ち帰りを受任する義務は納税者にはありません。
調査官としては、いつも持って帰っていますと言うでしょうが、「万が一紛失されたら困るし、急に必要になったときに手元にないと業務に支障をきたす。その責任がとれるのか。」と対応してください。
⑦コピーの要求は?
調査官からある資料のコピーが欲しいと言われた場合、きっぱり断ってください。
当然ですが、納税者に帳簿書類のコピーの提出義務もありませんし、税務署にコピー提出を強いる強制力もありません。仮にどこかに資料を落とされたら、会社の大切な情報が流出する危険もあります。必要のないコピーは断りましょう。
⑧金庫は見せないといけない?
税務調査では、調査官は金庫を開けてほしいとよく言ってきます。
このような場合についてもはっきりと断りましょう。
納税者の承諾なしに、税務調査で調査官は金庫を開けて中を調べることはできません。
なぜなら、これは調査ではなくもはや捜査であり、調査官に与えられた質問検査権の権限を超えているからです。
⑨調査官のもてなし方は?
税務調査時の調査官は長時間調査をします。
こういうときは昼食もごちそうするべきでしょうか?
昼食についてですが、税務調査官への昼食の用意は不必要です。
なぜなら国家公務員法の規定により、納税者(利害関係者)からの金銭・物品の贈与や接待を受けることが禁止されているからです。
⑩調査終了時
税務調査終了時に調査官から問題点の指摘が口頭でのみ伝えられることがあります。
税務調査の問題点が紙で渡されない場合、「口頭の説明だけでは不明確なため、問題点を書いた紙をいただけないか」という旨を調査官に伝えましょう。
紙に書いてもらったほうが指摘事項について確認もれがなくなるため、お互いにとってメリットがあります。